東京地方裁判所 昭和40年(特わ)792号 判決 1966年2月05日
被告人 旭ロール株式会社代表取締役 野口昇市郎 外一名
主文
本件各公訴を棄却する。
理由
本件につき、昭和四十年十月二十日、東京地方検察庁係員によつて同日付起訴状(宛名は東京家庭裁判所宛)が当裁判所に提出されたのであるが、右起訴状記載の公訴事実、罰条(右記載を引用する)等によれば、本件は労働基準法第百十九条第一号、第六十条第三項、第百二十一条第一項に該当する事件で、少年法第三十七条第一項第三号、裁判所法第三十一条の三第一項第三号により東京家庭裁判所に公訴を提起すべきことが法定されている事件であること、東京地方検察庁としては東京家庭裁判所へ本件起訴状を提出する意向のものが係員の過誤によつて、当東京地方裁判所に提出されたものであることが明らかであるが、当庁においても、右過誤に気付かず、そのまま受付受理し、当裁判所もまたこれを承けて、本件起訴状謄本を被告人らに送達したうえ、同年十二月十三日本件の第一回公判期日を昭和四十一年二月五日午前十時と指定し、訴訟関係人にこれを告知する等、事実上の訴訟係属が生じたことが記録上認められる。
以上の次第で、本件については公訴提起と認むるに足る手続を欠きながら、事実上の訴訟係属を生じたので、刑事訴訟法第三百三十八条第四号該当の場合に準じ、判決をもつて本件は各公訴を棄却して、訴訟関係を終結させるものである。
(裁判官 吉沢潤三)